太古の昔、種子島の南「茎永(くきなが)」の地に玉依姫(たまよりひめ)という美しい女性が、馬の背に米を積んでやってきました。村の人々は玉依姫に従い、荒れ地を耕し田を作り、姫がもってきた米を栽培したのです。それまで狩猟によって日々の糧を得ていた村人たちは飢えから救われたのです。ところがある年のこと、日照りが続き田の水は枯れてしまい、村人たちは山の陰の池から水を引こうとしました。しかし、玉依姫は神の住む池の水を引くことに反対しました。村人たちはそれでも強引に池の水を引くことにし、池の淵まで溝を掘ったのです。すると、神の怒りか大きな地響きと共に池の水は血のように真っ赤に染まりました。玉依姫は村人たちに災いが来ぬよう、池に一人赴き消えてしまいました。すると、地響きもおさまり、空から大粒の雨が降り出し、村の田は救われたのです。村人たちはその池を「宝満の池」と名づけ、池の側に「宝満神社」を建て、身代わりとなった玉依姫を祭ったのです。そして、その後この地には赤い色をした「赤米」が穫れるようになったのです。
赤米には、ポリフェノールの一種「タンニン」がたっぷり含まれています。ポリフェノールは高い抗酸化作用をもつことで注目されています。活性酸素の働きを抑え、老化や病気を予防し、シミ・シワなどの肌の老化も防ぐ作用が期待されています。また、血圧を下げるなどの薬理効果も見込まれています。
種子島では各地の水田で古代から赤米が栽培されていました。南種子町の宝満神社には、稲の魂を授かるお田の森と御神田であるオセマチがあって、稲作にかかわる伝統的な神事として、ここだけで栽培されている赤米を守りつづけています。